泣きたくなるようなキス  なきたくなるようなきす

                −望美Side−  /  少しシリアス、少し甘々












「もうすぐ、終わる…」


握り締めた拳を胸に当て、望美は瞳を閉じる。






この戦が終わる、ということ。

それは、弁慶と共にいる理由も無くなる、ということ。



どこまでも果てしなく続く、青い空。

きっと元の世界にも同じ空が広がっている。

だが、そこには弁慶がいない。






「望美さん?」


背後からふわりと抱き締められ、望美は思わず振り返る。


「ここにいたんですね。皆が探していましたよ」






望美の瞳に映る弁慶は、いつもと同じ…優しい笑顔。



その変わらない笑顔が安心でもあり、今の望美には切なくもあった。

弁慶は、自分をどう思っているのだろうか…と。

自分がいなくなったら、弁慶はどう思うのだろうか…と。






「どうか、したんですか?」


そっとその腕を解き、淡黄の瞳が心配そうに望美を見つめる。






それは、とてもとても近い距離で。






恥ずかしくて、だが切なくて…望美は無理やり笑顔を作る。


「なんだか…緊張してるみたいです。もうすぐ、戦が終わるから…」


「緊張、ですか?」


弁慶は少し目を細め、そして再び望美の身体を抱き締めた。


その力は先ほどよりも強くて、望美は驚いたように弁慶の瞳を見つめる。


「弁慶さ…」


「…嘘、ですね」


少し怒ったような…真剣な瞳が、望美に向けられる。


「嘘なんかじゃ…」


「嘘ですよ。だって…」


そっと、弁慶の手が望美の頬に触れる。






     
今にも泣き出してしまいそうな顔をしていますよ?






見抜かれてしまった心。

自分では、うまく笑顔が作れているつもりだったのに。






泣き出してしまいそうなのを堪え、望美は再び笑顔を作る。


「…緊張してるのは、嘘じゃないですよ。でも…」






怖いんです。






そっと、弁慶のその手に触れる。


「弁慶さんと、一緒にいられなくなることが…」






これが、望美の本当の心。

今の望美には、戦に出ることの恐怖よりも、
弁慶に逢えなくなる事の恐怖の方が大きかった。



戦が終わっても、ずっと…いつまでも弁慶と共にいたい…と。






「望美さん…」


「一緒に、いたいんです。ずっと…」






       弁慶さんが、好きだから。






まっすぐと弁慶の瞳を見つめ、想いの言の葉を紡ぐ。






想いを伝えることは、こんなに恥ずかしくて…泣きたい気持ちで。






逃げ出してしまいそうな、そんな瞬間、

望美の唇に、甘い口付けが落とされた。



どんなお菓子よりも、どんな言葉よりも甘い口付け。






「弁慶、さん…」


「…君の気持ち、とても嬉しいです。僕も…」






     君のことが好きです。






耳元で囁かれる、弁慶の言葉。


その言葉が嬉しくて、望美の瞳に涙が滲む。


「…戦が終わったら、その時は…」






しばらく間が空いて、それから続いた言葉。






「ずっと、僕の隣にいてくれますか?」






甘く耳元で囁かれる言の葉。






望美が返事を紡ぐ前に、

その唇は弁慶からの優しい口付けで塞がれた。










嬉しくて、暖かい温もり。

その温もりを、望美はゆっくりと感じていた。




















創作アンケートにて投票いただいたキャラで創作を書こうということで書かせて頂いた弁慶創作ですv

どうしよう…とか思いながら、結局望美Sideと弁慶Sideに分けて書いてみました。
弁慶Sideはシリアス度高めですが、この望美Sideは少しだけ甘めにしてあります(笑)

場面的には、弁慶ルート1周目で屋島の戦いに出る直前といった所ですね。
まだ弁慶の本心を知らない望美が、純粋に弁慶を想ってる…みたいな感じで。

なんか、どうしてもシリアスになっちゃいますね。なんでだろう??



















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